
大企業のウェビナーを商談につなげるには、社内でウェビナーへの期待値をそろえることと、聞き手を引き込める登壇者を立てることが先決です。この2つがそろえば大抵のウェビナーは成功します。
そのうえで、ウェビナーマーケティングの商談目標は月10件から段階的に引き上げます。集客は、トレンド、閲覧母数、掲載媒体数、独自性の掛け算で伸ばします。
目次
大企業のウェビナーが商談につながるかは、社内の期待値調整と登壇者で決まる
登壇者は、聞き手を引き込める、いわば「スーパー登壇者」であることが条件です。期待値調整とは、ウェビナーに何を期待するのかを社内でそろえることです。
私は従業員1,000人を超える会社などに、ウェビナーの状況をヒアリングしてきました。担当する立場によって、課題の見え方は変わります。役員層では「事業インパクトが不明」、マネジメント層では「上層部からの期待値が大きく焦りがある」、現場層では「社内でウェビナーの立ち位置が弱く予算もリソースもない」といった課題が並びます。
会社が大きいと、企画を始めたときの目的と、実施するときの内容がかけ離れやすくなります。役員層のトップダウンで始まったウェビナーでも、担当者が企画して実施する段階で、目的が変わってしまいます。期待値調整が先に必要なのは、このためです。
立場別に見る、大企業のウェビナーを商談につなげる打ち手
私がヒアリングした上場企業は、従業員がおよそ250名から7,000名の規模でした。ウェビナー担当の立場で
3つのパターンに分かれます。立場ごとに、商談につなげる打ち手が変わります。
新規事業の担当者は、競合を調べて他社がやっていない企画をする
新規事業の商材をウェビナーで販売したい担当者は、競合がすでにウェビナーやカンファレンスを実施している状況でした。この場合に最も有効なのは、競合を調べたうえで、他社がやっていない企画を実行することです。他社と同じような企画では、目立つことはほとんどありません。
大手企業には、社名から想像できない事業を手がけている会社があります。ウェビナーは30分から60分話せるため、なぜその新規事業を始めたのかという文脈を伝え、会社のイメージとのギャップや誤解を解く場になります。
既存事業の営業企画・マーケ担当者は、録画ウェビナーをフル活用する
既存事業の営業企画やマーケティングの担当者は、ウェビナーを一度は実施したのに商談化しない、というパターンでした。共通していたのは、担当者が異動でよく変わること、若手が担当していること、ノウハウが定着しないことです。
大企業では、社内の人が顔を出して登壇したがらない、他の業務で忙しく登壇者が見つからない、部署間の関係が薄い、といった事情も重なります。
打ち手は、録画ウェビナーの活用です。顔出しなしの録画ウェビナーでも商談化します。 スライドと中身を作り込めば、部署異動があっても、登壇者が転職しても使い続けられます。録画ウェビナーの活用は、次の記事でも解説しています。
経営企画が号令をかけた場合は専門家や外部リソースを入れて加速させる
ウェビナーは、社内を巻き込むのが難しい施策です。担当者がウェビナーという新しい施策を提案して始めると、企画から実施まで1か月から2か月かかる準備をして、1回目の結果が出ないことがあります。
そうなると、社内で「本当に意味あるんだっけ」という声が出て、周りを巻き込みづらくなります。
だから、経営企画や上層部がウェビナーをやろうと言ってくれたときが好機です。そのタイミングで、専門家や外部リソースを入れて加速度的に成長させます。役員層にやる気があるうちに外部リソースを活用してスケールさせると、勢いがつきます。

ウェビナーの商談目標は、月10件から段階を踏んで上げる
私がこれまでに話を聞いてきた200社近くの企業のうち、ウェビナー経由で毎月100件以上の商談を設定している会社は、私の知る限り2、3社でした。全体では1%以下の可能性があります。
毎月10,000件の申込を集めている会社も、私は知りません。ウェビナーの運営者は有名メディアではない、自社のコンテンツに個人情報を入力して映像を見てもらったうえで、成果を出す必要があります。ハードルの高い挑戦です。
現実的な月の商談目標は、10件(集客50名、開催1〜2回、商談率20%)から始めます。次は30件(300名、4〜5回、10%)、50件(600名、7〜10回、8.3%)、最後が100件(1,500名、13〜16回、6.6%)です。

ウェビナーを始めたてのころは、商談を設定しやすい時期です。まだウェビナーをしていない会社が初めて開くと、1回の開催で10件ほどの商談が取れることもあります。新しい施策で初め食いつきは良くても、開催を続けるほど商談は取りにくくなります。
集客300名から30件を取れれば、かなり良い成績です。50件以上獲得している企業は月7回から10回という開催数をこなしている企業が多いです。
段階を上げるときの6つのハードル
段階を上げるときには、6つのハードルがあります。
- 個人情報の取得: 誰が何をどれだけ見たかを営業に生かすには、個人情報の取得が必要です。ただし個人情報の入力が申込のハードルになり、ウェビナーの集客が伸びにくくなります。会員制の仕組みにすると、毎回の入力の手間が減り、このハードルが下がります。
- メルマガ配信数: 週に4回、5回しか送れないと決めている会社があります。私が聞いた話では、週5回以上から週12、3回ほど送っている会社同士を比べても、オプトアウト(配信解除)率はあまり変わりません。開封率は、配信数が多いほど下がります。送りすぎを心配する前に、自社のオプトアウト率を見てください。リストのセグメントが分かれていれば、毎日送っても大丈夫です。
- 運営リソース: 以前の職場では、私ともう1人の兼任の担当者の2人で、月に平均10回、多い月は15回のウェビナーを開催していました。録画ウェビナーの活用に加えて、共催先とはその場で3か月後の次回共催を約束する、1回のウェビナーを3回に分けて開く、といった工夫をしていました。
- 登壇者の技量: 同じ企画内容でも、登壇者によって商談設定率がまったく違います。登壇者の話し方を磨く方法は、ウェビナーを飽きさせない7つのコツ〜登壇技量を上げて商談化率を高める実践ガイド〜で解説しています。
- トレンド: 自社の業界にトレンドがあれば、それを交えたセミナーを開くと、申込は伸びやすくなります。トレンドを内容に取り込めるかどうかも、段階を上げる壁になります。
- IS(インサイドセールス)の技量: ウェビナーの終了後に、参加者へ電話をかける人の技量です。電話の進め方は、ウェビナー後の着電率を引き上げる方法〜商談設定を最大化させるウェビナー戦略〜で解説しています。
階段を上がるには、ウェビナーの担当部署だけで完結することはほとんどありません。終了後に電話をかける人がいて、営業担当者や役員が登壇するなら、その協力が要ります。社内の協力を得るために、ウェビナーのメリットを共有します。
社内の協力を得るために共有したい、ウェビナーの6つのメリット
社内説明にそのまま使える形で、ウェビナーのメリットを6つ挙げます。
- 態度変容を起こせる: 動画や記事は、見た人の解釈で終わってしまいます。ウェビナーは、顔が見えて、生放送で、質問にその場で答えられ、30分から60分の時間をもらえるため、こちらの意図を伝えられます。たった60分で、相手に欲しいと思ってもらうこともできます。
- 初月から成果が出る: ウェビナーをまだ実施していない会社に限った話です。ハウスリストの受け手には、この会社がウェビナーを開くのかと、珍しい施策に映ります。そのため最初から成果が出やすく、SEO対策やブログより、成果が出るのが早い施策です。
- 費用対効果が良い: 会場費が不要で、運営費も、最悪の場合はパソコン1台と1人で開催できます。広告費をかけなくても、SNSの投稿で数百人、数千人を集められる場合があります。ただし、商談にはつながりにくくなっています。認知拡大や接点づくりにはウェビナーが向いており、確度が高まった相手には、リアル開催も検討します。
- 第一想起が取れる: SNSと掛け合わせると、効果が上がります。ウェビナーに困ったらこの人の発信を見ればいい、と思い出してもらえる位置を作れます。そのためには、参加者の役に立つ内容を重ねる必要があります。
- 指名検索数が増える: 一度に多くの人の目に触れるため、会社名の検索数が増えます。検索数の増加はウェビナーだけの効果とは限りませんが、要因の1つであることは間違いありません。指名検索から届く問い合わせは確度が高いものが多くあります。
- 1対N営業の効率化: 一度に複数の人に向けて営業できます。営業感のない営業として有効なので、活用して営業を効率化します。
ウェビナーは商談につなげにくくなっているのか
結論から言うと、ウェビナーは商談につなげにくくなっています。ただし、ウェビナーがなくなる見通しはありません。
セミナーや展示会イベント施策は、担当者不在の割合が最も高い
ミエルカの調査では、マーケティング部門に所属する164名のうち、「セミナーや展示会イベント施策」の担当者が不在と答えた割合は31.1%でした。戦略策定、SEO施策、Web広告、SNS施策、データ分析、MA/CRMを含む7つの役割の中で、最も高い割合です。調査期間は2023年4月25日から5月1日です(出典: ミエルカ「【マーケ担当 164名に聞いた!】マーケティング部門で今、足りない人材と今年、注力していきたい施策は?」)。

ウェビナーは兼任の担当者が多い施策です。ウェビナーやイベントがうまくいっている会社には、専任の担当者がいます。専任でウェビナーだけを担当する人が1人いるかどうかで、開催数も成果も変わります。 兼任の会社は、専任を置く方向に動くことを勧めます。
リアル開催に戻っても、ウェビナーはなくならない
リアル開催に戻る動きはあります。しかし、リアル開催だけになる可能性は低いとみています。ウェビナーは会場費がかからず、何百人も集められる価値があるため、残り続けます。
商談につながりにくい3つの要因
ウェビナーを商談につなげにくくしている要因は、3つあります。
- 内容を聞いてもらえていない
- 同じようなコンテンツがあふれている
- 登壇者の技量が足りない
私が大企業のウェビナー担当なら、こう戦略を立てる
私が大企業でウェビナーを担当するなら、商談を増やすために、次のように動きます。やることを10、やらないことを6に絞ります。
私がやること10
- 他社の成功事例を共有して、社内の期待値を調整します。登壇者を2人ほしい、企画メンバーをもう1人ほしいと、上司に伝えます。他社の事例は、ネクプロの導入事例でも確認できます。
- 既視感のない企画をつくるために、いろいろな人からアイデアをもらいます。他社がやっているウェビナーや動画サイトで見られる内容をやっても仕方がないため、自社ならではの独自企画にします。
- ネームバリューを生かして、4社以上で共催ウェビナーを開きます。大企業からの打診は、断られにくくなります。以前の職場は13名のスタートアップでしたが、それでも上場企業と共催でき、ゲストが無償で登壇してくれたこともありました。認知拡大では届く母数が多いほど有利です。共催する会社が増えても1回の開催にかかる手間はあまり変わらず、各社のリストに告知できる分、届く人数が増えます。
- 1段階クオリティを上げた録画ウェビナーを作ります。
- 他社でウェビナーが上手な人材を、副業で採用します。品質は事前に分からないため、こちらで企画の土台を作り、その土台に沿って企画を任せます。企画する人が増えるほど、企画数も増えます。
- 芸能人やタレントを起用します。認知拡大の企画として、可能性があります。どこまで予算をかけられるかの判断になります。
- 主催と司会だけを担当し、ほかは共催先に任せます。
- 顔出しなしで登壇します。転職などで登壇者がいなくなっても、ウェビナーを使い続けられます。
- 社内インフルエンサーをつくります。
- 月100件の商談設定を目指すために、動画オウンドメディアを構築します。具体的な作り方は、この記事では扱いません。
私がやらないこと6
- 2社での共催はしません。特別な意図がある場合は別です。理由は、上述の「私がやること」3.のとおりです。
- 安易なハイブリッド開催はしません。時間がかかり、費用対効果が良くないためです。ブランディングを目的にするなら有効で、目的とゴールを決めて企画すれば、ハイブリッド開催も選べます。
- 大きな会場をわざわざ用意して、収録して配信することはしません。すでに会場がある場合は別です。
- 新卒を含む新人に、登壇を任せることはしません。話の質は視聴者にすぐ伝わり、見るのをやめられてしまうためです。任せる場合は、必ず録画配信にして編集します。
- 新規事業部やマーケティング部だけで企画することはしません。営業部も巻き込んで企画します。
- 広告費を使うことはしません。予算が潤沢にある場合や、成功したウェビナーがある場合は別です。
初めてなら3〜4か月で月15件、実施済みなら6か月で月50件の商談設定を狙う
ウェビナーを初めて開催するなら、3〜4か月かけて月15件の商談設定を目指します。すでにウェビナーを実施している会社は、6か月かけて月50件を目指します。

初めての場合は、共催ウェビナーを月1回、単独ウェビナーを月4回開きます。集客の目安は、共催で100人、単独で30人です。運営体制は2人で、他の業務との兼任で構いません。
すでに実施している場合は、共催ウェビナーを月3回、単独ウェビナーを月6回開きます。集客の目安は、共催で150人、単独で60人です。運営体制は3人で、こちらも兼任で構いません。
単独ウェビナーは、1つのコンテンツを作って、同じ内容を月4回開いても構いません。ウェビナーは、日程が合わないことによる不参加が一番の機会損失だからです。まずは月1回、共催ウェビナーを確実に開くことが、最初の目標になります。
商談設定を増やす7つの施策
商談設定を増やすために取り組める施策を、7つ挙げます。まだ実施していないものがあれば、検討してください。
- ターゲットを明確にして、刺さるキーワードを探し、タイトルやバナーに使います。
- 生放送で双方向のウェビナーにして、参加を能動的にします。会議形式で開き、参加者とテキストでやり取りします。
- ウェビナーの前に、ターゲットだと思う人へ電話して、関係をつくります。
- 内容は同じまま、タイトルとバナーを変えます。タイトルとバナーに対する答えが中身にあれば、最後だけ変えても満足度は落ちません。
- 月6〜7回、ウェビナーを開催します。
- ウェビナー後に、無料デモや特典などの、無料または安価なフック商材を複数用意します。すぐに商談を求めず、興味を高めてから次に進めます。
- 相談会を開きます。壁打ち会や相談会を開くと、そこからの商談設定率が上がります。
集客最大化の方程式は、トレンド×閲覧母数×掲載媒体数×独自性
ウェビナーの集客数は、トレンド、閲覧母数、掲載媒体数、独自性の掛け算で決まります。この4つをそれぞれ最大化することが、集客最大化への道です。

- トレンド: タイトルにトレンドを混ぜると、集客が増えます。
- 閲覧母数: 共催ウェビナーを通じて、共催先のハウスリストに送ってもらうメールの数が多いほど、集客は増えます。
- 掲載媒体数: イベント集客サイトやプレスリリース配信サービスなどの掲載媒体には、媒体ごとに攻略法があります。全部に載せたから100人増えるわけではありません。媒体の担当者と話しながら、使い切ります。
- 独自性: 他社では聞けない、自社だから聞ける内容を開くと、人が集まります。
大企業のウェビナーを商談につなげる最初の一手は、社内の期待値調整です。自社が月10件、30件、50件、100件のどの段階にいるかを確かめ、次に越えるハードルを上司に示して必要な協力を頼みます。
