今、多くの企業が顧客への新たなアプローチ方法として、また、ウィズコロナ時代のセミナー開催のための手段としてウェビナーに注目しています。しかしリアルセミナーからウェビナーに切り替えることで、「参加者が減るのではないか」「参加者の気持ちが盛り上がらないのではないか」など不安に思っている方は少なくありません。
そこで今回はネクプロの活用事例として、リアルセミナーからウェビナーへ切り替え、コロナによる社会の変化にも対応できた、アドビ株式会社様の事例をご紹介します。
B2Bマーケティングチームの取り組み
―今回は「B2Bマーケティングにおけるウェビナー活用」というテーマで、アドビ株式会社の加藤様にいろいろお伺いできればと思います。本日は何卒よろしくお願いします。
アドビ株式会社マーケティング本部マーケティングマネージャーの加藤です。私は、現在B2Bマーケティングチームに所属し、主にドキュメント製品である「Adobe Document Cloud」のマーケティング活動をリードし、ドキュメントのPDF化・電子化によるテレワークの推進や業務効率化などによって、お客様の企業活動を支援しています。
本日はよろしくお願いします。
―さて、早速ですが、御社のB2Bチームでは、昨年秋からウェビナーに取り組んでいると伺いました。どのようなことを期待してウェビナーを開催しているのでしょうか?
目的をひとことで言うと、「ウェビナーを通じて企業の方々にアドビ製品を認知してもらい、関心を持ってもらうこと」です。
アドビといえば、フォトショップやイラストレーターといったクリエーター向けソリューションを提供していることで認知されていると思います。しかし、実はアドビの製品はクリエーターの方に限らず、ビジネスの場でもご活用いただけます。業務上取り扱う膨大な文書の電子化のために、「Adobe Document Cloud」をご活用いただくことができます。
電子化によって業務効率の改善を目指したいと考えている方で、アドビの製品で電子化ができることをご存知でない方がいらっしゃいます。そのような方に向けた、いわゆるナーチャリング活動にウェビナーを活用しています。私は、特に大企業のお客様向けのマーケティングを担当していますので、リード獲得からご購入まで、非常に多くの時間をかけてナーチャリングを実施しています。ウェビナーであればお客様としては参加がしやすいので、一度だけではなく、何度も参加してもらいたいと考えています。
個人のお客様であれば、一度ウェビナーに参加してみて、興味があれば自身の判断でご購入いただいたり、まずは無料体験に参加してみたりと、次の行動までに要する時間は短い傾向にあります。一方、法人のお客様は、ウェビナーで得た情報を上司に提案したり、IT部門に利用可否を確認したり、費用について役員の承認を得たりしなければならないなど、非常に多くのステークホルダーが関係してくるため、すぐに購入に至ることは多くありません。
B2Bのマーケティングはすぐには結果が出ない長期的な活動です。メールやホワイトペーパーダウンロードなど様々なお客様へのアプローチ方法がありますが、その中でもウェビナーはアドビからお客様へダイレクトに情報を提供できる有効な場所だと考えています。
リアルで実施するセミナーと比較したウェビナーのメリット
―新型コロナウイルスの影響でリアルイベントの自粛が余儀なくされた中で、セミナーの代替手段としてウェビナーを始める企業も増えていますし、今まさに始めようとしている企業も多いですよね。多くの方が気になるのは、リアルで実施するセミナーと比較して、ウェビナーにどのようなメリットがあるのかだと思います。御社では、半年以上ウェビナーを開催されていますが、何がウェビナーのメリットだとお考えでしょうか?
昨年まではお客様との対面や直接的なコミュニケーションを重視していたため、会場を使ったフィジカルなセミナーを開催していました。昨年秋に「もう少し気軽に参加できるセミナーがあっても良いのではないか」と考え、チームでウェビナーを開催しました。結果、非常に多くの方にご参加いただき、ウェビナーの需要を実感しました。
- あまり時間をかけずに参加したい
- 遠方でもウェビナーなら参加できる
と考えるユーザーが多いのだと思います。
そして次のステップとして、オフラインとオンラインとで50%ずつのシェアで開催し、以降はオンラインのシェアを増やしました。アドビの情報を求めているお客様の掘り起こしができるうえに、リソース的にはオンラインとオフラインでは工数はほとんど変わらないため、効率のよい方法です。より多くの方に参加いただく機会を提供できるのであれば、今後も継続的にウェビナーを開催するメリットはあると考えています。
―現在は100%オンラインで開催されていますよね。今の状況下だからこそメリットが出ていると感じられることはありますか。
先ほど、オンラインとオフラインとで50%ずつのシェアでウェビナーを開催したとお話しましたが、現在は100%オンラインです。ウィズコロナの環境において、お客さまやアドビ従業員、そしてそのご家族の安全と健康を最優先するというアドビポリシーに則って、現在、リアルイベントは全く開催していません。
この難局においても、アドビ製品に大変多くの関心をいただいております。8月時点で、すでに日本の大企業や中小企業において8千人以上の方々に、私が開催しておりましたドキュメントクラウドや電子サインのウェビナーにご参加いただいています。
特に、今年の外出自粛要請や緊急事態宣言中では、文書電子化によるテレワークをテーマとした、PR調査やウェビナーを開催したところ、非常に高い関心があることを実感しました。PR調査データは各種テレビ番組で紹介されましたし、4月末のウェビナー参加者は1回あたり1,200名に急増いたしました。
コロナ禍だからこそ情報収集を目的とした動きが非常に活発なのだと感じましたし、ウェビナーのおかげで全国のお客様のご期待に応えられたのだと考えています。―確かに、場所の制約がなくて、全国から参加してもらえる可能性があると言う点は大きいですよね。実際に参加する側としても、デスクから気軽に参加できると言う意味で気軽だなと思います。
気軽に参加していただくというのは、重要なポイントだと考えています。
現在、私が開催するウェビナーは、主に昼休みの時間帯を使って、1時間で終えるように開催しています。リアルセミナーだと1時間のイベントでも、前後の移動時間考えると、結局2、3時間くらい費やしてしまいます。ウェビナーの場合は、移動時間がなくURLにアクセスするだけでどこからでも参加できるため、1時間あれば参加可能です。これまで移動にかかっていた時間を本来の業務に費やすこともできるわけです。
また、様々な時間帯での開催を試した結果、お昼休みでの参加率が高いという結果になりました。業務中はデスクから参加しづらいという日本人の性格もあるかと感じています。そして、開催時間は、90分や120分では負担が高く、業務時間が削られることにストレスに感じる方が多いようです。1時間をご希望される声もあったので、基本的には1時間でおさめています。
―なるほど。ところで、参加のハードルが低い反面、エンゲージメントという観点で言うと、顔を付き合わせずにオンライン上のコミュニケーションだけで築けるのか、という意見もありますよね。そのあたりはいかがですか。
確かに始めは「お客様の表情が見えず、あっさりしたコミュニケーションでエンゲージメントが弱くなるのではないか」という懸念がありました。しかし、実際に開催してみると、チャット機能を活用して、非常に多くのご質問をいただき、コミュニケーションが活発になることが分かりました。「多くの人がいる場で質問はしづらい。逆に、チャットなら気軽に質問できる」という方も多く、オンラインの強みが良い形で働いて、逆にコミュニケーションが活発になっているのかもしれません。ここは日本人ならではかもしれません。
特に、アドビには、Adobe Signという電子サインソリューションがありますが、コロナ禍で契約締結を電子化したいという需要が非常に高まり、おかげさまで多くの引き合いをいただいています。電子サインセミナーなどでは、「ハンコがなくても法的に問題ないのか」、「既存のクラウドサービスに電子サインを連携できないか」など、答えきれないくらいの質問をいただきます。その場合、翌日のメールで質問集にまとめて回答を送付することもあります。これらの質問に一つ一つ応えることで、商談に向けてご検討いただくチャンスに繋がると思います。
コンテンツ開発やウェビナー開催中における工夫
―ここまで聞くと、ウェビナーならではの強みについてはよく理解できた気がします。ここから、実際に御社のB2Bチームによるウェビナー活用について、より具体的にお伺いします。まず、ウェビナー施策を実施する際、どの部分で工数がかかっていますか?
一番時間をかけているのが準備期間であるコンテンツ開発です。社内のステークホルダーと意見交換し、営業からお客様が今抱えている課題を聞き、これに答えるコンテンツを用意するようにしています。ウェビナーの運営面については、ネクプロがあるため安心してコンテンツ開発に集中できます。
―確かに、先日実際に御社主催のウェビナーに参加してみて、コンテンツへの強い思いが感じられました。開催中の工夫としては、他に何か注意している点はありますか?
当日の演出面では、一方的なプレゼンでは飽きられてしまうため、インラタクティブな演出を心がけています。
- 話し手の顔を写す
- チャットでコミュニケーションする
- 時間が許す限り話し手が質問にも答える
- アンケート結果をリアルタイムで表示してみせる
といったことを実施しています。
ウェビナー開催後の参加者フォロー
―質問が活発に行われると、整理する必要性が生じますよね。質問への回答やQ&A集の配布のほか、参加者に理解を深めてもらうために行っていることはありますか?
ウェビナーに一度参加しただけで、アドビ製品を完全に理解するに至るのは難しいので、積極的に資料提供とアーカイブ動画の共有をすることで理解を深めてもらうようにしています。
せっかくのオンライン開催なのに、急な用事で参加できなかったり、席を外したりしたら内容が分からないのでは、リアルセミナーと変わりません。オンラインだからこそアーカイブ動画と資料PDFのデータを提供し、いつでも繰り返し視聴していただくことが可能です。ほぼすべてのセミナーで、「途中までしか視聴できないから続きは後で見たい」、「上司にウェビナーの参加レポートを提出する必要があるため、資料やアーカイブ動画が欲しい」といった要望を参加者からいただいています。
また、ネクプロのライブラリー機能も活用しています。過去のセミナーをカテゴリーに分け、お客様には関心の高いテーマのセミナーを自由に選んでいただき、いつでも視聴可能にしています。動画セミナーをご紹介するチラシも制作して、営業に渡しておけば、お客様の課題にあわせてタイムリーなご案内が可能です。新しいウェビナーを企画しながら、過去のセミナーを活用することで、活動の幅が広がり、とてもメリットを感じています。
集客における工夫
―企画したウェビナーへの集客として、どんなことを行っていますか。
現在は、月2回、B2B向けセミナーメールを配信して集客しています。Adobe Document Cloudだけではなく、Adobe Creative Cloudも含めた企業様向けのセミナー情報をすべて網羅しています。Adobe Document Cloudとしては、すでにユーザーになってくださっているお客様にもさらに製品を活用していただきたいという狙いがあります。実際この配信メールに改訂したことで、メール経由の参加者が増え、ウェビナー需要が高いことが証明されました。以前は各製品担当よりそれぞれセミナーメールを配信していましたが、統合したことで集客数を格段に増やすことも可能となりました。
また、最近では、新規リードの参加推移に注目しています。これまでの既存リードのナーチャリングに加え、新規リードの獲得という役割にも効果的だと分かってきました。B2Bメディアのセミナー掲載やSNS広告からも積極的に誘導を行っています。
取得データの活用ノウハウ
―質の良いコンテンツをつくって人を集めた後、ウェビナーを成果につなげていくためには、適切に顧客情報を取得して、分析し、活用していくという流れが大切になってくるかと思います。まず、開催の前後でアンケートを実施されていると思いますが、アンケートをつくるうえでのポイントはありますか?
開催後のアンケートでは、主にお客様のお悩みや課題についてヒヤリングしています。今後のナーチャリングプログラムを開発する材料として、それをもとに次に提供すべき最適な情報を検討しています。マーケティングで用意するアセット、営業やインサイドセールスがお客様とコミュニケーションする際のトーキングポイントの参考になるようにしています。
―得たアンケート情報はどのように分析するのでしょうか?
主に2つの方法で分析しています。1つ目は、ネクプロプラットフォームのレポート機能を使った分析です。Excelデータを加工しなくても、アンケート結果を視覚的に分かりやすいグラフとして表示してくれます。関係者に「アンケートを見てください」とExcelデータを渡してもなかなか読み込んでくれません。しかし、このレポート機能であればセミナー当日に展開でき、関係者が見てくれる頻度も高くなり、大変重宝しています。
2つ目は、お客様の関心度をスコアリングし、「すぐに営業対応すべきリード」、「もう少しマーケティングでナーチャリングが必要なリード」などに仕分けし、コンテンツ開発のヒントとしています。
―ツールで効率的に対応できるのは便利ですよね。基本は開催当日に発行する、ということですが、レポーティングのスピード感は大切ですか?
そうですね、担当営業によっては次の日からフォローを始めたいという方もいますので、スピードは大切だと思います。お客様の温度感も、「アドビから詳しく話を聞きたい」と回答した方がいたとしたら、1週間後にそのリードはホットではなくなってしまいます。最適なリードを最適なタイミングで営業にパスするのが大切だと考えています。
―そのほか、セミナーの参加回数や視聴中のチャット情報なども取得できるかとは思いますが、そのあたりの情報も計測されているのでしょうか?
B2B向けの活動において、参加回数はシビアにみています。Aというウェビナーに参加した方に次回はBのウェビナーに参加してもらうように誘導し、アドビ製品への関心を高めていく必要があります。そのために、参加数の多さよりも参加率の方が重要であると考えています。
また、チャットの情報は営業にも共有しますし、質問が多かった部分を反映するなど、以降のウェビナーのコンテンツ開発に役立てています。
ツールの選定理由と今後の展望
―ここまでウェビナーをうまく活用するためのヒントをいろいろと伺えた気がします。御社はウェビナーツールとして「ネクプロ」をご利用いただいていますが、なぜネクプロを選んだのでしょうか?
実は、アドビは「Adobe Connect」という自社製品でウェビナーを開催することができます。しかし、
- リード管理が可能であること
- 各マーケッターが自ら運営できる使い勝手のよさ
の2点をチーム内で検討し始めた際にネクプロを知り、トライアルした結果、Adobe Connectではなくネクプロを利用することにしました。今ではB2Bチーム以外のチームでもネクプロが定着しています。
―最後に、ウェビナーを続けていくうえでの今後の展望を教えてください。
ポストコロナでは、ウェビナー100%ではなく、以前のようにオフラインのセミナーも開催すると思います。以前に戻るということではなく、両方のメリットを目的にあわせて使い分けたいと思っています。ウィズコロナは「これからもオンラインが良い!」と認識してもらえるチャンスなのだと考えています。
アドビは「Changing The World Through Digital Experience」をミッションに掲げています。「Digital Experience(顧客体験)」を通じて世界を変えながら、今後も多くの企業を支援し続けていきたいと考えています。オンラインセミナーというデジタルの場を通じて、ドキュメントのデジタル化の可能性をこれからも伝えてきたいと思います。
―タイミングとして今はチャンスですよね。リモート推奨の社会情勢が、リテラシーが低い人すらもウェビナーに参加するきっかけを提供することになっています。そして、参加してみると「オンラインも良いかも」という感想を持つ人が多いですよね。今回お話を聞かせていただいて、ウィズコロナ、アフターコロナの時代の中で、ウェビナーがスタンダードになってくる可能性は大いにありえるなと感じました。御社のウェビナー発信には、これからも注目させていただきたいなと思います。本日はありがとうございました。
まとめ:ネクプロを導入した結果
アドビ株式会社様のネクプロ活用事例について伺いました。アドビ株式会社様がネクプロを導入した結果を整理してみます。
- リアルセミナーに比べて短時間で参加できるウェビナーの需要の高さを実感した
- 工数を増やすことなく、今までアプローチできていなかった顧客の掘り起こしができた
- 新型コロナウイルスの流行による社会の変化に対応できた
- 参加者からチャットを通してたくさんの質問を受けることができた
- ウェビナー配信時間以外でも過去の動画や資料を通して顧客にアプローチできるようになった
- コンテンツ開発に集中できるようになった
- ウェビナーで得たデータを次回のウェビナーや営業、インサイドセールスに活かすことができるようになった
- 顧客に対して最適なタイミングで最適なアプローチができるようになった
リアルイベントで接触できる顧客には限界があり、ウェビナーを併用することで接触できる層を広げることができた事例でした。また、ウィズコロナ、アフターコロナの社会とウェビナーは相性が良く、時代の変化にあわせた企業活動が可能になるでしょう。
これからの時代のセミナー運営に悩んでいる方や顧客への新たなアプローチ方法を模索している方、ウェビナーを効率的に運営していきたいという方は、ぜひネクプロをご検討ください。
ネクプロについて詳しくはこちら。